コンサータ錠について


ヤンセンファーマ社「コンサータ錠」の使用が成人ADHD患者にも承認されたようです(当方ソース未確認)。


まず、コンサータ錠とは何か、について説明しようと思います。聞いたことのあることを自分なりに噛み砕いただけなので正しい知識を得たい方は書籍や専門サイトの方を参照していただければと思います。


コンサータ錠は「メチルフェニデート(後述1)」を含む、現在日本で承認されているADHD(注意欠陥・多動障害。後述2)の治療薬の一つです。

※1 メチルフェニデート。精神刺激薬。脳内物質のひとつ「ドーパミン」の再取り込み機能に作用して集中力を上げるはたらきがある、といわれています。

※2 ADHD(注意欠陥・多動障害)。落ち着きがなかったりやたら不注意だったり衝動的に何かやっちゃう、といった症状が特徴とされる発達障害のひとつ。「アスペルガー症候群」と混同されることも多い気がします。概念としてはまず上位に「発達障害」という括りがあって、そのすぐ下に「自閉症スペクトラム」と「ADHD」があって、自閉症スペクトラムのまた一つ下位のカテゴリに「アスペルガー症候群」がある、という認識でいいと思います。


先に述べた「メチルフェニデート」を含む薬は昔から存在しました。その一つが「リタリン」です。これは歴史の長〜いお薬です。このリタリンは近年(ここ5〜10年くらい前でしょうか)、乱用(後述3)が問題視され、現在ではこのリタリンナルコレプシー(後述4)の患者にのみ、かなり厳正なチェックのもと、慎重に処方される薬になりました。

※3 乱用。本来は「医師の処方や本来の目的を離れて薬を服用したりすること」という意味です。一回でもそういうことをすれば「乱用」とされるんですね。リタリンのケースだと、5年くらい昔に、医師(だったか薬剤師だったか)の母親が受験生の息子に、勉強の効率を上げるため(本来的ではない用法=乱用です)に与えた、ということが問題になりました。

※4 ナルコレプシー。「眠り病」ってやつです。この病気に関してぼくが知っていることはあまりありませんが、少なくとも自閉症ADHDよりかは患者数のうんと少ない病気であるらしいです。


リタリンが規制されるまでは、ADHDの患者さんにも処方されていたわけです。それが処方されなくなってしまったので、リタリンの代わりにメチルフェニデートを含む別の薬品が用いられることが増えました。その代用品のひとつが「コンサータ」です。コンサータは「徐放型」といって、リタリンよりも長くおだやかに作用するとされる薬です。


ところが、先に述べたリタリン批判の流れを受けて、コンサータもその使用を規制しようという動きが強まりました。そこで、ADHD患者へのコンサータの処方に「18歳未満の者、もしくは18歳までにコンサータを服用していた経験があり、投薬を継続する必要があるとされる者」という制限をかけました。

この結果どうなったかというと、要は「成人(18歳以上)ADHD患者にはコンサータの新規投薬が認められなくなった」ってことになりました。


ADHDの治療法は主に「精神療法」と「薬物療法」に大別されます。精神療法ってのは、カウンセリングをやったり催眠をかけたりする割と古典的な治療法です。薬物療法は読んで字のごとくお薬を飲ませて症状をどうにかしようという療法です。


(ADHD患者に行われるものに限らず)精神療法は「長〜い時間が掛かるもの」という認識が一般的なようです。効き方も曖昧です。「精神療法を受けたこととは関係なく、患者が精神的に成長した、といえばそれだけのことじゃないか!」と言われたら反論の余地がない療法です。

薬物療法は精神療法に比べればずっと早く効果が表れます。脳の神経にまで作用しているのだから当然といえば当然です。患者さんの期待も大きいです。その期待もまた薬物療法の効果として表れることもあります(後述5)。これを言ったらキリがないと思いますが…。

※5 プラシーボ効果。偽薬効果ともいわれます。「実際に薬そのものが効いているわけではないが、薬を服用したことによる期待感によって、ありもしない薬の作用が表れることがある」ということ。少し乱暴に言えば「効く効かないは気持ちの問題」ってことです。

「そんな効いたか効かないかも分からない時間の掛かる精神療法をやるくらいなら、薬物療法の方が早くて確実ではないか」って話にもなりますが、薬物療法薬物療法でデメリットがあるんです。薬物には大抵副作用があります。精神的・肉体的な依存性があるものもあります。それから、やたらとお金が掛かる(薬価=お薬の価格が高い)場合もあります。あと、世間的なイメージもあまり良くないです。

あと、ADHD自体が比較的新しい概念で、その定義もあやふやだったりするもので(中には「成人のADHDは存在しない」って意見の人もおおぜいいます)、それに対応できる臨床医もまだまだ少ないです。

ADHDの症状自体が「甘え」「個人の性格の問題」と言ってしまったらそれまで、ってようなものなので「そんな甘ったれた連中を安易に薬漬けにしちゃダメでしょ」的な反発もあるんです。


でまあ、精神科に行ったところでまともに相手してくれるかどうかも分からない、相手してもらえたところでコンサータを貰えない、そういった成人のADHD患者さんたちは苦労してきた(のだと思います)。


話が長くなりましたが、そういった中でコンサータはすごく期待が集まっていたわけです。リタリンが有名な薬なのでそのせいもあるのでしょう。アメリカではADHDの理解もかなりあり、コンサータどころかリタリンまでかなりポピュラーな治療薬となっているらしいです。日本の薬事法は先進国の中でもかなり厳しい部類になるらしいですね。


繰り返しますがソース未確認なのでまだなんとも言えませんが、成人ADHDへのコンサータの症状が承認されるのなら、きっと成人ADHD界隈ではかなり大きなムーブメントになるでしょう。

コンサータの処方を受けられる成人ADHD患者と受けられない成人ADHD患者に分かれて、その間で格差と言ったら語弊がありましょうが、何らかの線引きがなされて、それはそれでまた一つの問題になるのだろう、と個人的には思います。


なんでも薬で治そうという発想は短絡的ですこし不健全であるようにも思えますが、ADHDというものがそれなりに広く認知されている以上は単なる「甘え」では済まされない部分もあるのだと思います。

精神病だって理解が進み治療法が確立してきたのは「現代」の話です。いわんや発達障害をや、と言っても言い過ぎではないと思います。

そう考えると今回のコンサータ承認も発展途上段階の一つのイベントに過ぎないのかもしれません。医学の進歩を待てない人たちに、その時代におけるベストな治療を行うことが臨床医の務めであるなら、このできごとがその使命の大きな助けとなることを願ってやみません。


wikiなどを参照せずにその場の勢いでここまで書き進めてしまったので知識が不正確だったり文章全体の構成もいいかげんだったりするかもしれません。ご容赦を。


(追記)なんか大学受験についての話を以前にこのブログでしたら、その日だけ一気にアクセス数が伸びたので、「検索ワードに引っかかった人たちがこのブログの読者の大多数なのではないか?」という疑問が生まれまして、自分の興味の範疇でホットな話題があったから今回はそれに触れてみるか、っていう軽いノリです。


(果たしてここまで読み進めた人がどれだけいるのだろうか…うーむ)